毒笑小説 内容(「MARC」データベースより) おぞましい笑いは毒よりも強く、不可思議な笑いは人の心に静かに染み込む。「誘拐天国」「エンジェル」「マニュアル警察」など、身の毛もよだつおかしさ、思わず吹き出すおそろしさ、奇妙な味わいの12篇。 (感想)再読3回目 誘拐天国 金と力を持つ大富豪のじいちゃんたち、孫と遊ぶ時間欲しさに実行される「狂言誘拐」。結末は! あまりにもじいちゃんたちの発想が一般市民とはかけ離れていて妙な笑いが噴出してしまいます。子供のころは遊ぶことのみで勉強のべの字もしなかった自分にとっては、最後の子供たちの言葉。せつないんだか、うらやましいんだかよくわかりませんね。 エンジェル 新生物として発見された「エンジェル」。外観が天使に似ていることからついたのだが、そのうち用途がいろいろ変遷して・・・・・。 人の思想の潮流は二つある。人の命に勝るものはない、というものと人の命に勝るものがあるというものである。人は戦争をするとき後者を理由に始め、終わるときに前者を理由とする。なんともご都合主義ではないですか。「エンジェル」もそんなことを風刺しているのでは・・・・。 手作りマダム 定例パーティを開催し部下の奥様方に手作り品を披露する重役夫人ではあったが・・・・・。 手作りマダムというよりは、ただのおせっかいなおばさんという感じですが・・・。 旦那の地位で奥さんの序列が決まるというこの馬鹿げた発想が嫌いです。 マニュアル警察 自分の妻を殺害した男が警察署に自首しようと訪れるのだが・・・・。何かが変?。 自分の上司にもこういう人がいました。何においても規則規定集に従わなければ事を進めない人。確かにマニュアルは必要だとは思いますが、あくまでもそれは使う人の問題です。ひとそれぞれが良い持ち味を発揮できれば良いのでは・・・。 ホームアローンじいさん 孫のアダルトビデオが見たくて留守番をするおじいさん。ところが思わぬ出来事が・・・・・・。 じいさんエロいですよ。でもその行動がかわいいというか微笑ましいというか笑えてしまいます。泥棒まで捕まえて英雄気取りなのに、スイッチを入れた瞬間みなさんの顔はどんなものでしょうね・・・・・・。 花婿人形 母親のいうことしかできない跡取り息子茂秋。ところが、自分の結婚式の日にとんでもないことが起きてしまうのだ。 今時だからこそ、こんな子供がいるのかな?と思えてしまいます。会社を辞めるのに親が退職願いを持ってくる。なんてことが現実にあるんですよね。そういう人が間違っても金の力で人の上に立たないことを祈ります。 女流作家 女流作家が産休あけから姿を見せなくなる。原稿はきちんと入稿されてくるのだが・・・・。 現実世界にもゴーストライターなんているのでしょうか?何か妙な不安?やるせなさみたいなものを感じてしまうのは私だけなんしょうかね。 殺意取扱説明書 「殺意取扱説明書」、古本屋で手に入れた奇妙な本。中身を見て実行にうつそうとするのだが・・・・・。 素晴らしい本ではないでしょうか。殺意を管理してしまうのです。ですからこの本を読めばいつの間にか殺意を消し去ることも可能? ここまでやったなら、丸々一冊「殺意取扱説明書」を書いてみたらどうなんでしょうか。 つぐない ピアノ教師である実穂のもとへやってきた初老の男。初心者である彼は猛烈に練習を行い発表会に出たいと申し出てくる。なぜ彼はここまでピアノにこだわるのか? ほんの短いこの短編で何度読んでも目頭が熱くなります。これは笑えませんよ、東野さん。 栄光の証言 陰気でさえない孝三、しかし、殺人事件の目撃者になったことから一躍脚光を浴びるのだが・・・・・。 あまりにも憐れで正直笑えません。嘘の上にまた嘘を重ねる。意図したことではなくとも真実に変えることはできないのですから・・・・・。 本格推理関連グッズ鑑定ショー {「名探偵の掟」 密室宣言---トリックの王様} で天下一大五郎の初手柄となった「壁神家殺人事件」の心張り棒が、鑑定士壁神辰哉により鑑定額0円と評価される。だが、そこに隠された真実は・・・・・。 これは反則でしょう。といいながら「名探偵の掟」を引っ張りだしてきて検証してみたりもしてかなり楽しんでしまいました。パロッタ内容を見事に数ページでミステリにしてしまうとは・・・・・。それにしてもほんと東野さんただものじゃないですね。 誘拐電話網 誘拐犯と名乗る男から身代金を要求する電話が入った。だが、それはまったく関係のない子供であり、親に要求するのは忍びないので、支払う相手は適当に選んだと言う。これは真実なのか?なんとか逃れるためにまた・・・・・・。 実際こんな電話がかかってきたらどうするでしょうか?あかの他人だから人質は殺されてもしょうがない?そういい切れないのでは・・・・。オレオレ詐欺に匹敵するまでになるんじゃなかろうか。 文庫のほうは巻末に京極夏彦さんとの対談などもありかなり充実した内容です。「秘密」作成秘話(なんてみんな知ってることだけど)なんてのもありです。 本書は、それほどお笑いって感じもしなかったのですが、対談の中にもあるように笑いのスイッチと泣くスイッチは近所にあるということのようです。 では「黒笑小説」再読に向かいましょう。
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毒笑小説/東野圭吾
毒のある笑いでニヤリとしながら読む本でした。読みやすいです。 「マニュアル警察」 まるで役に立たない公務員をそのまんま模写したよう。マニュアル通りに順を追って手続きしていかないと殺人事件の捜査が前進しないダメっぷり。妻殺しを自首した犯人と警察の会話が噛み合.. ...続きを見る |
うつわの器 2006/06/12 01:03 |
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