手紙

監督 : 生野慈朗
脚本 : 安倍照雄 、 清水友佳子
原作 : 東野圭吾
出演:: 山田孝之, 玉山鉄二, 沢尻エリカ

(ストーリー)
強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。

(ネタバレ・感想)
 何年ぶりに映画館に足を運んだだろうか?DVDがすぐに出るものでまったくいかなくなっていた映画館。
 高校時代は年間50本の映画を観に通ったものだが・・・。
 働き始めればもっといけるなぁと思っていたのに、結局、年々減り続けいまや1回もいかなくなってしまった。
 その重い足を動かしたのは、まぁ気まぐれなんだけど。原作の「手紙」には想い入れもあるもんで・・・。

 原作はもう何回も読み、読むたびに深く打ちのめされるのです。
 加害者が犯した罪。人の命に対する償いなど、永遠に不可能なのだと。
 どこかで折り合いをつけるとしても、それは心の底から許すことなど出来ない問題。
 自らが被害者家族になったとしても、相手の気持ちを理解など出来るはずもない。
 それでは、差別してもいいのか?と言われれば答えを持てない。
 ただ、犯罪になど手を染めないという思いを持つこと、一度起これば波紋の大きさはとてつもなく大きく答えの出ない迷宮で迷わなくてはいけない。
 自分だけ悪ければ良いではすまない現実があり、どっち付かずで結論が持てないのだ。

 映画も原作に沿って良い仕上がりだった?気もするのだが、見終わったときに感じた違和感はいったい何なのか?この感想を書いている間もモヤモヤが消えない。
 終盤に近づくにつれ、すすり泣きがあちらこちらから聞こえていたのだが・・・。
 確かに原作に沿って造ってある。言葉も原作に近い形でトレースされていると思うのだ。
 それでも、何かが違う・・・。
 それがうまく言葉に書き表せない。原作と訴えている内容に差異がある様な気さえするのだ。それが、なんなのか?
 映画では一応の結末が用意されるのだが、その描きかたで良いのか?と思っているのかも・・・。
 おそらくは、似て非なるものなのだろう。
 「人間ってすてたもんじゃねぇ、ってことを伝えたかったんです。」という監督の言葉でこの映画は、やはり原作のスタンスとは違うんだなぁ。とはたと思うのですがね・・・。

 東野さんの問いたい部分はちょっと違う気もします。
 原作は確かに落とし込みます、人間ってなさけねぇ、どうしようもねぇ、かすかな光すら見せません。読んでてもういいだろう、とさえ思えてくる。
 でも、どんなに感動しても、絆があるから、兄弟だからでは割切れないものが実際は残るんじゃないだろうか?
 差別なんていけないと世の人は言う、でも現実はそんなことはどこ吹く風で猛烈な差別があるのが事実ではないか?
 そして、こんな状況にならない事が大切なのだと・・・。
 
 本作をただ感動した。絆は大切だで終わらせても良かったのだろうか?
 なんて言ってはいても、かなり固唾を呑んで観てましたけどね。吹越満さんの「もう、いいでしょう。終わりにしましょう」では不覚にも涙が・・・。
 まぁ、東野作品の映像化の中ではかなりの秀作のほうなんでしょうね。

 DVDが出て見直した時には原作も読み直して比べてみたいものです。
 もっと色々なことに気づくことが適うといいのですが。

この記事へのコメント

眠り猫
2006年11月06日 23:04
今晩は。
カイさんは、東野さんが言葉にできない胸の内を代弁しておられると思います。

完成披露試写会のインタビューで、東野さんは奥歯にモノが挟まったような言い方に終始されました。映画を観るまでは、東野さんのいつもの照れ隠し、自虐ネタだと思ったのですが、観終わった後は、ストレートに表現できないものがあったからあのような言い方になったのかもしれない、と考え直しました。
私が妄想した、東野さんの言葉にできなかった戸惑いというのが、ここで、カイさんが書いておられるようなことなのです。
ただ、映画としての成功ということを考えれば、こんな風にするしかなかったのだろう、とも思いました。

書物と映画では噛み砕ける量が違いますし、東野さんが伝えたかったことを映像だけで表現するのは、やっぱり無理なのだろうというのが、私の結論でした。

長々と書いてしまい、申し訳ありません。
今、サイトの方で東野作品の人気投票を実施しています。良かったら、ご参加ください。^^
2006年11月07日 18:37
眠り猫さんコメントありがとうございます。
そういってもらうと何となく胸のつかえがとれました。
批評があまりにも絶賛だらけなのでどうなんだろうと不安になって…。

人気投票は難しいですね。個々に想い入れがあるし、順位をつける感覚を通りこしてますから…。
全部1位ってわけにはいかないのでしょうね。

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    Excerpt:  久しぶりに映画館まで行って泣きました。 テレビのニュースで、どっかの刑務所で、受刑者にもこの映画を見せたという話をきいた。 こちら  映画館で映画を選ぶ時、なにか見る前から結末がわかるよう.. Weblog: 知彼知己 racked: 2006-12-03 01:19